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世界一の山椒
去る7月11日、当会副会長であるPAPUAさんが主催する「第40回関西望麺会」が開催されました。
ここで大阪・堺に店を構える1902(明治35)年創業の和風香辛料の専門店(株)やまつ辻田の四代目、辻田浩之さんが山椒のお話をしてくださいました。
山椒にはぶどう山椒、朝倉山椒、山朝倉山椒の3種がある。
ぶどう山椒は加工がしやすく、香りが高いので粉山椒に使われる。ただし揮発性が強く、香りが長くはもたない。日本の山椒の8割くらいはこの品種。皆さんが「山椒」といって見かける山椒のほぼ100%がこれ。
朝倉山椒は加工はしにくいが色がよく、実山椒として佃煮などに使われる。
「色の朝倉、香りのぶどう」といい、ぶどう山椒は一瞬の香りがいいので粉にして、色目を朝倉で合わせることが多い。
そしてもう1つが山朝倉山椒。香りがよく、そしてそれが長く続くのが特徴。ただし希少。
やまつ辻田ではこの山朝倉を使って粉山椒を作っている。
今年パリで行われたパスタの世界大会で、ゴルゴンゾーラにこの山椒を入れて世界チャンピオンになった。
……こんな話の後、前日に石臼でひいたばかりの山朝倉山椒を配っていただきました。
「これが世界の頂点の山椒です。各テーブルで1人だけ…今開けてみてください」
実際に私たちのテーブルでも1人の方が開封し、取り皿に開けてみたのですが、本当に香りが高い! この日のテーブルは回転テーブルでしたが、回転してこちらに山椒が近づくたびに強烈な存在感を最後まで放っていました。
辻田さんがおっしゃったように、ここまで香りがよく、かつ長持ちする山椒は初めてです。
山椒の「メチャクチャおいしい使い方」も教えていただきました。
「山椒が3で、塩が1」
この山椒塩を使うと……山椒は痛覚を刺激し脳にダイレクトに伝わるので減塩もできる。ステーキも天ぷらも唐揚げも、この山椒塩だと抜群においしい。ウナギや焼鳥に山椒を振るのは一般的な使い方だが、これもウナギや焼鳥のタレ(醤油)の塩分がある。山椒は塩分と一緒にでないとおいしくならない。
また山椒は油に溶ける。素揚げの野菜に真っ青になるくらいかけてもシビれない。うまみだけが残る。水餃子、サラダ……ポテトチップスなどにかけてもとてもおいしい。
また、山椒の保管の方法も教えていただきました。
開封してもしなくても、冷凍庫に入れるとずっと風味が変わらない。
香辛料の保管には3つの条件がある。
光、空気、温度。
缶に入れたら空気に触れる。
瓶に入れたら光に触る。
常温で置いておいたらすぐに悪くなる……
それがこの袋ごと冷凍庫に入れれば、ずっと変わらない。
今日帰ってこの袋を冷凍庫に入れて忘れて1年2年経っても、ほぼ変わらない。
いい香辛料を買った時はすぐ冷凍庫。ただ、店に並んでいる状態で保管が悪ければ元も子もないので、鮮度のいいものを買う。
こんなお話を、口に残るシビレと香りを楽しみながら聞いていました。
辻田さんは昔教師をされていたということで、わかりやすく楽しく、そしてためになるお話でした。
香辛料という「コナモン」、本当に奥が深いです。