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第14回 タコ工場探検記 寿水産・北尻兄弟の挑戦
タコ工場探検記 - 寿水産・北尻兄弟の挑戦 - |
が、タコそのものが、地球上から絶滅してなくなるのではないか、そんな不安にかられることはある。
縄文期からタコ壷漁をしてきた民族だから、タコが好きだ、という気持ちはよくわかる。
でも最近のわが国のタコの食べ方は、一時の食べ方にくらべると、王様食べというか、金の力にものを言わせて、バクバクと必要以上の消費をしているように思えてならない。
たこ焼きも、タコが大きけりゃいいというものではないのに、切り方がちがうんです、とタコの大きさにたよるだけの店が増えているのも事実だ。
どんな料理にも合い、おいしーヘルシーの三拍子。イカともちがうし、その食感は他のものでは代用できない。
味も独特ながら、強い主張があるわけでもないのに、おでん、にぎりでもタコがなくては寂しい。
ましてたこ焼にとれば、命となる核。たこ焼からタコをはずせば、ただの小麦粉ボールにすぎない。
ここで腰を据えて、タコそのものの現状を理解する必要はありそうだ。
おかげさまで、このコーナーには週に5~600件のアクセスがあるが、そのなかに、ゆでダコを専門にあつかっておられる、北尻耕一さんがいらした。
「うちの工場を見に来ませんか。」
こんなありがたいメイルをいただき、喜び勇んで押し掛けたのである。
JR東部市場をおりてしばらく行くと、百済駅という看板が見える。
こんな由緒ありそうな駅あったの?。
こんな由緒ありそうな駅あったの?。咲隊員と驚いていると、
- 「ここは貨物駅で、これがあるから東部市場はこの場所につくられたんですよ。10年前の国鉄民営化とのとき、駅は廃止されて、いまは機能していませんけどね」。
彼からこのような説明を受けることはしばしば。何でもよく知っている人である。
仲間誉めをしている場合じゃない。
東部市場はすぐわかったのだが、大きな道を隔てて巨大な二つの建物があり、どっちをたずねていいのやら。
とにかく入り口をみつけ、忙しそうにしている市場の人にたずねながら、寿水産のコーナーにたどりついた。
私も年末は母親がここに買い物に来るので、何度か足を運んだ事はある。
とにかく広い。
無数に並ぶ卸のお店。
一般客でも買えるとはいうものの、小さな単位で時間をかけては、申し訳ないような肩身の狭い思いになる。
行き交う荷車にぶつからないよう、歩きながらも要注意。
寿水産は北尻商店としてスタート、昭和42年に寿水産という会社組織になった。
去年で45周年、扱うのはボイルダコ、活けダコ、その他タコ加工品及びイカ関連商品だが、ボイルダコ(私はゆでダコといわしてもらいます)が大部分を占める。
ゆでダコ業者というのは日本に 200軒ほどあって、寿水産のような設備を持つところは30軒ほどらしい。
工場は市場から少し歩いたところにある。
2代目社長の三男である北尻佳三さんが案内してくださった。
工場というだけあって、クレーンや荷物運搬の車がみえる。
早速大きな長靴にはきかえて、見学がはじまる。
メイルをくださった長男の耕一さんと佳三さんが、私たちの細かな質問に丁寧に答えてくださる。
(1)原料出庫
冷凍状態の生ダコを前日の昼ぐらいから解凍する。
タンクのような専用の巨大容器に入れ、井戸水をかけながら、回転させて解けやすくする。
(2)股切り
翌日早朝、ゆでやすくするために、解けたタコの目と目の間に切り目を入れる(手作業)。
(3)塩もみ及び洗い工程
大量の塩をタンクに入れてまわしながらタコになじませ、また洗う。
(4)ボイル工程
いよいよボイル。熱湯の槽のなかにタンクをおろして、回転させながらゆであげていく。ものによっては、隣の槽にうつしながら、ゆでていくこともある。ゆでる時間やタンクの回転速度などは、この道30年のベテラン、熟練の森さんの勘にまかせてある。
(5)冷却工程
ゆであがったタコは真っ赤になって、今度は冷水へザブン。このタイミングも大切。川のような冷水の槽を進んでいく。
(6)パッキング
冷やされたタコはセンサーで(釣り針など)金属をふくんでいないか選別機を通ったあと、箱詰めされていく。
耕一さんのレジュメに従って、見たままの報告である。できたてのタコを一切れもらったが、ゆでたては殊の外おいしい。
最近まで商社マンだった耕一さんが、こうして家業を継ぐために戻ってきたのは、タコの値段が上がりつづけ、商売としての転機を迎えていることも一因としてあるらしい。
現在のタコはその70%が北アフリカ産(モロッコ・モーリタニア・西サハラ)で、モロッコ産のものがダントツに多い。
ヨーロッパでもタコの需要は伸びていて、漁の時期を制限しなければならない状況があるらしい。
たこ焼屋さんも嘆くとおり、ここ数年のタコの値上がりは、こういった世界の食糧事情をもまきこみながら、数年後を想定すると危機感をもたざるをえないのも事実だ。
わが娘を嫁に出すかのような思いをこめて、りっぱなタコをゆであげる熟練の森さん。
モロッコのタコ漁の船にも乗り込んだり、実戦的に兄の経営を助ける佳三さん。
そして3代目として、今後のゆでダコ業界を見極めようとしている耕一さん。
日本のたこ焼のためにも、寿水産の活躍を願わずにはいられないのである。
以上、熊谷 真菜
《探偵メモ》 会社名 ・・・・ 寿水産株式会社 住 所 ・・・・ 大阪市東住吉区今林1-2-68 TEL ・・・・ 06-756-2643 |
鎌探偵のコメント | 咲探偵のコメント |
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タコを思うとき、どうしても赤い生きものだと想い浮かびます。 でも実際のタコは真っ白いものです。私たちの見るタコの赤は、実はゆであがる段階でつけられたものだそうです。 けど、白いタコよりゆで揚がった赤い桜色のタコの方がおいしそうなのはとても不思議です。 タコのゆであげる作業は、今はかなり機械が入ったとはいえ、ゆでる温度や混ぜる薬品の分量は、職人さんの加減次第。 これによって色も舌さわりも味も変わってくるそうです。 これもみんな昔からの現場経験でできる技、見事なものでした。 ゆでたてはやはりおいしい!! 現在タコの漁獲高が時々休漁しなくてはならないほど、減っているそうです。 また、タコは養殖はできない!!。とか。 たこがなくなることはないと思いますが、なんとかたこやきのため、そしてたこ料理の好きな人たちのため、寿水産のみなさまにはこれからもおいしいゆでだこの供給をお願いしたいものです。 身近に食べてるタコですが、食卓に届くまでについてはよく知らなかったので、ただびっくり発見ばかりでした。 | たこやきページ代表を目指す、KNESたこやき探偵団にとっては、今回の北尻さんからのメールは、たいへんうれしい申し入れでした。 なかなか見ることのできない、ゆでタコのできる工程を見学し、感激!! 職人技を拝見しました。 今後も、たこやきファン代表として、皆様に、色々な情報をお伝えしていきたいと思います。皆様のご意見をお聞かせください。 |
※この情報はインターネット黎明期である1995年に開設された世界で初めてのたこやき専門ウェブサイト「熊谷真菜のページ」内の、これまた世界で初めてのたこ焼き食べ歩きサイト「月刊たこやきめぐり~なにわのたこやきめぐり」に掲載されていた情報です。
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