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第11回 うまい屋

☆★☆ たこやきめぐり 第11回 ☆★☆

 
鍋から味から保温器まで 特製のうまさ、ここにあり!
- うまい屋 -
 どうしても忘れられない店がある。
 こんな書き出しではじめると、何となく落ち着いたバーの紹介記事になってしまいそうだが、私の15年間に渡るたこ焼めぐりの中で、忘れられない店をあげるとするなら、やはり今回の「うまい屋」になるだろう。
 グルメマップの存在さえなかった時代、たこ焼屋さんめざして街をさまようのだが、夕方屋台で出るたこ焼屋さんは多くても、常設のちゃんとしたお店はまだまだ少なかった。そのうち、しがない大学生の私の勘は、日に日に鋭くなり、あの角を曲がったら、お店があるかもしれない! という予感は当たるようになっていた。

 JR天満から天神橋筋を北へ。ふと左に曲がると、天五中崎町通り商店街の入り口が見えた。小走りに横断歩道を渡る。と、そこにはかなり年期の入った大きな看板が待っていたのである。「大阪名物たこ焼 うまい屋」。この店はいける。そんな直感がうれしかった。が、店先に立つ主人らしきおっちゃんの、がんこそうな雰囲気が目にはいったとたん、それまでの興奮が一気にさめるような、そんな思い出は今もかすかに残っている。

 母親の代から今年で45年目。2代目喜多武俊さんは70歳には見えない若々しさ、そして勢いがある。この勢いに負けてしまうと、いろいろ聞き出そうとしてもむずかしい。本当はすごく優しいおじさんなのに、未熟な私はその優しさを見抜くのに時間がかかった。

 4年前から息子さん夫婦も参加して、うまい屋はますます盛り上がる。独特の店構え、独特の焼き鍋、そして独特の焼き方。出かけるたびに発見はふえる。
 以前、朝日新聞の取材でもおじゃましたことがあった。焼く風景を撮らせてもらって、中で腰掛けて食べていると、喜多さんが突然やってきて、私の皿からひとつを取り上げ、手で口へほうりこむ。

 「やっぱり焼きすぎや」。少しいらだっている。おびえながらたずねると、「さっきカメラ気にして手をゆるめたんで、これ失敗や」、ということだった。
 たこ焼職人とでもいおうか、一つ一つに命をかけて焼くおじさんの姿。こういう精神があるからこそ、毎日同じ味を焼き続けることができるんだろうな、私なりに実感した。

 油はラードをつかう。黄色の天かすもほかの店では見たことがない。鍋の様式もさることながら、鍋で細工された保温箱。喜多さんは樋(とい)と呼んでいる、こんな上等な保温器具はどこを捜してもないはずだ。ぽこぽこと鍋の窪みにあふれんばかりに焼きあがったアツアツのホヤホヤが、その樋におさまっていく。

 「市電が走っていた頃は、そこが停留所で、いま公園になってるとこに松竹と東宝の映画館があって。夜中まで人いっぱいやったし、映画終わったら、すごい行列でな。樋いっぱいのたこ焼があっというまになくなるんや。よそのたこ焼を入れてもベチャッとするのに、うちのはならへん。なんでか知らんけど、ようできてるやろ」。
 鋳掛け屋のおじさんに特注でつくらせたという保温器は、客を待たせないためのアイデアだった。銅の輝きが、使い込んだ鍋とともに、店の風格をひきたてる。

 喜多さんが特攻隊だったこと、その後音楽学校に通ったり、俳優をめざしたこともあったとか、ダンスもプロ級、その他もっとすごい事実も聞かせてもらった。たこ焼へのこだわりも納得できる、喜多さんのユニークかつ素晴らしい経歴だ。たこ焼食べながら、こんなにおいしい話が聞けるとは。隊員ともども大感激だった。

 そういえばもう10年になるが、私の結婚パーティのとき、バナナホールまでたこ焼 200人分を運んでもらったことがある。ユーミンさながら花嫁が踊り歌ったあとのお口直しに、舟にのったたこ焼は好評だった。そのとき一緒に届けてくださった下の息子さんは、今はバリバリのスタジオミュージシャンとして、父親の夢の半分を受け持っている。

以上、熊谷 真菜



《探偵メモ》
店名→ うまい屋
住所→ 大阪市北区浪花町4-21
TEL→ 06-6373-2929
営業時間→ 11:00~19:00
休日→ 火曜日
席数→ 20席
価格→ 280円(1皿8個)
ビール 大 500円 三ツ矢サイダー 大 200円
小 350円 小 150円
コカコーラ 150円 バヤリースオレンジ 150円
保証牛乳100円 コーヒー牛乳100円


探偵のコメント探偵のコメント

ここのたこやきは生地に下味がついていて、ソースをかけなくてもとてもおいしい。
そして、ついもうひとつ欲しくなる味です。
青のりもかつおもたこやきの本来の生地の味を生かすためで全く入ってません。
卓上にぽつんとソースのケースがおいてますが、ソースの中身は自家製ブレンドソース。
ケースのふたがプラスチックの皿だったのがびっくりでした。
それから店の中ではたこやきはフォークで食べます。
ご主人は昔ながらの作り方にこだわり、材料は同じ店から仕入れ、たこやきの器具も自家製、「なにごともなるべく変えず、昔ながらの味」を守っています。
でも味については絶えず工夫を続けて。
ご主人の筋の通った人生を象徴するようなおいしいたこやきです。
昔、天神橋筋商店街に行った時、ときどき立ち寄る店でした。その時、ご主人はとても恐い印象をもっていたのですが、気さくに話をしてくれ、とても有意義でした。
朝11時から夕方まで絶えず列ができ、絶えずたこやきが焼かれているお店です。

ソースなしでも、美味!
中が‘もちっ’としてて、いい歯ごたえ(?)があります。
濃厚な味なのに、いくつでも食べれました。
ソースをつけると、またおいしいです。
2つの味を楽しめて、とってもお得!です。
ご主人が語って下さった御自身の半生が、とても興味深く、たこ焼もさらに奥深い味になりました。


※ 
(追記) 2006年にご近所の火災でお店が類焼し長く休んでいましたが、2007年2月24日より再度オープンしました。
(2007年5月現在。営業時間・商品・価格などの内容は変更されている場合がありますので、ご了承願います。)


※この情報はインターネット黎明期である1995年に開設された世界で初めてのたこやき専門ウェブサイト「熊谷真菜のページ」内の、これまた世界で初めてのたこ焼き食べ歩きサイト「月刊たこやきめぐり~なにわのたこやきめぐり」に掲載されていた情報です。
※お店の住所・電話番号・価格など、内容は特に記述のないものは取材当時のものです。
※お店の公式サイトなど、リンク先が閉鎖されたり変更されている可能性があります。
※紹介したお店はすでに移転・閉店されている場合がありますのでご注意ください。

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