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第8回 本町タコ平

☆★☆ たこやきめぐり 第8回 ☆★☆

 
玉突きとたこ焼のおいしいミスマッチ
- 本町タコ平 - 
 大阪をざっと見渡して、たこ焼き屋さんを置いていくと、ぽこっとドーナツ状に抜け落ちた部分があることに気づく。
 御堂筋から堺筋、中之島の南あたりから本町近辺にかけての地域は、たこ焼とは無縁な土地柄といってもいいだろう。ビルがたちならび、いわば中心的な印象があるけど、残念ながら、ユニークなうどん屋さんはあっても、たこ焼屋さんはほとんど見かけない。

 たこ焼の似合わない町は、味気ない町と考えていいかもしれないが、西の四つ橋筋をこえると、ほっとさせてくれるスペースが待っている。もともとビリヤード専門店だったのが、いつのまにかその一角でたこ焼きを焼くようになった。
 ビリヤードといえば、プールバーのブームとともに、デイトスポットに利用する人も多い。つまりおしゃれ。カウンターではきれいなカクテルも出してくれる。ところがこの店は、カクテルの前にたこ焼なのだ。

 これがまたうまい。まず焼きがちがう。そのまま食べてもおいしい奴を明石風、なにわ風、洋風、和風とバラエティにとんだアレンジによって飽きさせないのだ。
 七味とねぎの仕上げが微妙に変えられると、同じように焼いたものとは思えないほどの味わいのちがいが体験できる。一通り玉突きの腕を見せたあとに、おもむろにいただくたこ焼きの味。
 23歳の若さで店を任せられているのは、田口実布さん。オーナーをたこ焼の師匠とあおぐしっかり者。同じ材料で同じように焼いてもやっぱり焼く人がちがうと、味が変わるんですよ。私はまだまだです。
 テンポの早い口調といい、手付きのよさといい、大阪っ子やなあ、と思ったら、岐阜出身という。新大阪人(*1)として、「なにわのたこやきと撞球場」の店長として、すっかり板についている。

 さて満足して帰ろうとすると、入り口から腰の低い、でもちょっと派手な装いのやさ男がはいってきた。この人が実は、たこ焼と玉突きという妙な取り合わせの発案者だったのである。この店とは、一年前からのおつきあいだが、師匠と呼ばれるオーナーとは初めてだ。なんともイメージしていた雰囲気とはあまりにちがって、私もあわてていた。
 師匠にしては軽すぎる。オーナーにしては若すぎる(もしかしたら20代かもしれない)。彼はたこ焼屋というよりも、プールバーの主人にふさわしい雰囲気で、あいさつしてくださった。
 名刺からも「スリーアイシステム研究所」とハードな先端的な匂いがする。たこ焼のタの字もないではないか。ややがっかりしながらも、気をとりなおしてお願いした。

 店の奥に立ち入り禁止区域があって、そこには何か特別なものが、隠されているようなのだが、田口さんからは中はまだ見せられないと固く禁じられていた。あそこをのぞきたいというお願いだった。
 熊谷さんに頼まれたらしかたないです。
 オーナーは、やさしく軽やかに案内してくださった。それはクリスタルな、電飾バリバリの、まさに未来的なビリヤードの台だったのである。重々しい従来のビリヤードがまぬけて見えるほど、ライトな玉突き台は神々しく輝いていた。
 ビリヤードとたこ焼というミスマッチアイデアの次にひかえるのは、この近未来サイバービリヤードだったのだ。
 (*1)新大阪人:今発売中の昭文社刊「マップルマガジン大阪97」の「コテコテ大阪文化論」をご参照ください。

以上、熊谷 真菜

《探偵メモ》
お店の名前→本町タコ平
又の名を Pool&Park
お店の住所→大阪市西区西本町1-7-14
TEL:06-536-4546
地下鉄本町駅27号出口出て左50歩
営業時間→15:00~22:00
休日→日曜・祝日
メニュー→和風味 400円・・・・しょうゆベース少し辛口
明石風500円・・・・丼のだし汁にタコヤキが入っています
洋風味400円・・・・甘口ソースとマヨネーズ
なにわ風400円・・・・何も塗らず生地本来の味を
ねぎのせなにわ風(8コ)500円
レスカ400円ジンジャーエール 350円
ティーソーダ400円コーヒーHOT350円
コーヒーICE400円ウーロン茶300円
紅茶350円コーラ300円
メロンソーダ400円オレンジ350円
ハイネケン(びん)600円/(生)500円

探偵のコメント探偵のコメント
なんとビリアード場とたこやき店が一緒になっているのです。世界広しといえどなかなかこんなたこやき屋はないと思います。
和風味は、中にしょうゆ味に七味とうがらしがふりかけてあり、あっさりしたしょうゆ味に七味のピリピリがほのかで、新鮮な感じでした。
また、明石風は普通一般的には、たこやきとだし汁がならんででてくると思いますでしょ。なんとここの明石風は関西風うどんのどんぶりがボーンと出てきます。そして中にたこやきがごろごろ。だしにつかったたこやきが新鮮でけっこうおいしかったです。
他の二種類もあっさりした関西風でグー。
ここは西区のオフィス街、取材中に次から次にサラリーマンやOLが立ち寄って買っていきました。中で食べる人はあまりいないみたい。
NHKの新しい連続テレビ小説「ふたりっ子」に河島英五さんがマスターのビリヤードたこやき店「ムサシ」がでてきます。舞台の天下茶屋商店街にビリヤードたこやきはないはずだし、きっとここがモデルでは。もっともここ「本町たこ平」は若くてきれいな女性店長のお店ですが。
メニューを見たとき、「私の好みなら、何もつけないなにわ風だわ・・・あと、明石風も試さなければ・・・マヨネーズかけもおいしいでしょうね」と心の中で、つぶやきました。
はっきり言って、和風にはあまり興味はなかったのですが、たこやきに七味とうがらしは、(酒飲みの私には)ヒットでした。
上にかかったのりも、青のりではなく、黒い焼き海苔。
これがまた、高級(?)な味を出していました。
・・・これから、「たこやきには七味とうがらし」と心に決めました。

※この情報はインターネット黎明期である1995年に開設された世界で初めてのたこやき専門ウェブサイト「熊谷真菜のページ」内の、これまた世界で初めてのたこ焼き食べ歩きサイト「月刊たこやきめぐり~なにわのたこやきめぐり」に掲載されていた情報です。
※お店の住所・電話番号・価格など、内容は特に記述のないものは取材当時のものです。
※お店の公式サイトなど、リンク先が閉鎖されたり変更されている可能性があります。
※紹介したお店はすでに移転・閉店されている場合がありますのでご注意ください。

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